銀座界隈ドキドキの日々

銀座界隈ドキドキの日々

2021年7月24日

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「銀座界隈ドキドキの日々」和田誠 文春文庫

和田誠は多才な人だ。タバコのハイライトのデザインは彼によるものだし、イラスト、似顔絵は素晴らしいし、絵本や作曲も一流だし、しかも映画監督としても「麻雀放浪記」という素晴らしい作品がある。平野レミと長年仲良く夫婦をやっていることだって、ひとつの才能だしね(笑)。しかも、彼は全然偉ぶらない。実に自然で素朴ですらある。これって、すごいことだ。

この本は和田誠が美術大学を卒業して「ライト・パブリシティ」というデザイン会社に勤めてからやめるまでの日々が描かれている。デザインの仕事から、イラスト、作曲、アニメ、絵本などいろいろなことに手を広げていった過程や、たくさんの眩しいほどの才能あふれる人々との出会い、交流が描かれている。

もうずいぶん前になくなってしまった「話の特集」という雑誌を私はずっと購読していた。この雑誌の表紙をずっと描いていたのが和田誠だ。それだけじゃなくて、アートディレクターとしてかなり深く関わっていたらしい。この雑誌の創刊、一度潰れて、もう一度立て直すあたりのエピソードもとても興味深い。面白い雑誌だったのになあ。最後の頃はダメだったけど。未だにあの雑誌には思い入れがある。

解説を井上ひさしが書いている。この本に登場する沢山の人達も、解説者も、ずいぶん亡くなってしまったのだなあ、としみじみ思った。年月はすぐに去るものだなあ。

2014/7/24