雑誌に育てられた少年

雑誌に育てられた少年

2021年7月24日

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「雑誌に育てられた少年」亀和田武 左右社

 

若い頃、私は雑誌フリークであった。その頃の雑誌はサブカルチャーの発信基地であり、オシャレだったり、かっこよかったり、マニアックだったり、教養深かったりした。本や映画や演劇や美術やファッションや旅の情報にあふれていた。「話の特集」「噂の真相」「ビックリハウス」「面白半分」・・・。いろんな雑誌から、いろんなことを学んだ。そこに書いている人たちは私よりはずっと大人で何でも知っているけれど、あんまり遠くにはいなくて、いつか手が届くところにいる人たちみたいに感じていた。私も大人になれば、あの人達みたいになんでも知っている顔をして、かっこいいことを言ったり書いたり出来るんではないかと妄想していた。
 
そんな書き手の一人が亀和田武だった。元はエロ雑誌の編集長らしいのだけど、映画にも文学にも造詣が深そうで、自分と違う意見の人間に対しては、相手がどんなに偉そうな人でも平気で皮肉たっぷりの雑言を書いたりしていた。それが当時はかっこよく見えたんだなあ。
 
この本は、亀和田武があちこちに書いたコラムの、まだ本になっていないものを集めたものだ。読むと、遠い昔にこれ読んだことがあるぞ、とかすかな記憶が蘇ってくる。あの頃は、これがかっこよく見えたんだなあ、とちょっと笑ったりもする。十代だった私にはものすごい大人に見えた亀和田さん、まだ三十代だったのか、青いなあ、なんておばちゃんは笑うのである。思えば遠くへ来たもんだ。
 
本人が編集していたエロ雑誌に自分の顔写真を乗せたりしていたらしい。ジュリーのマネッコ写真があって、笑ってしまった。ナルシストだったのか。でも、ジュリーと比べたら、だめよね。とはいえ、今やジュリーも亀和田さんも、おんなじようなおじいちゃんになっちゃったというわけだ。

2019/9/23