黙って行かせて

黙って行かせて

2021年7月24日

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「黙って行かせて」 ヘルガ・シュナイダー 新潮社

重く、辛く、苦しい本だった。でも、あっという間に読んでしまった。途中でやめられなかった。

母と子の関係ってなんだろう、としょっちゅう私は考えている。自分が母親だからかもしれない。そして、自分の立場からしかものを考えられないつまんない人間だからなのかもしれない。どんな問題に出会っても、どんなひとにあっても、そこにある親子関係、それも母と子の関係が気になってしまう私だ。狭いなあ。

この本は、ナチスドイツとアウシュビッツという重く大きなテーマの物語である。だけど、私はこれを母と子の物語として読んでしまった。

娘に愛されたい母、母に愛されたい娘。
でも、それは永遠に無理なのかもしれない。

ナチス・ドイツのやってしまったことは、あまりに恐ろしすぎて、私は直視できない。小学生の頃、アンネの日記も途中で嫌になった。ヒトラーの写真が、怖くて正視できないこともあった。あの頃を振り返る沢山の本を呼んだけれど、いつも辛かった、苦しかった、嫌になった。

でも、この歳になって、はじめて、受け止めて読むことができたように思う。それは、大きな社会問題を、母と子の問題に単純化したせいだからなのか。私が、それによって逃げたからなのか。それとも、そこに本質があるからなのか。

私には、まだわからない。

2013/2/14