FOK46

2021年7月24日

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FOK46 突如40代でギター弾き語りを始めたらばの記」

大槻ケンヂ 角川書店

大槻ケンヂは結構好きだ。「グミ・チョコレート・パイン」みたいな小説もいいし、なんだかよくわからないヌイグルマーとしての活動も見てきた。「サブカルで喰う」みたいなぶっちゃけ話もよろしい。ただ、彼本来の活動である音楽だけは、ろくに聞いたことが無い。わはは。

と思っていたら、オーケン本人が、そんな感じ。彼は何か表現がしたかっただけで、それが音楽でなければならないわけでもなかったらしい。結果的に、音楽。それも、楽器なんて弾けない、音符なんて読めない、だからボーカル。そのまんまで40代まで来てしまったと言うから、それはそれで結構すごい。

そんなオーケンは、なんとロックミュージシャンのくせにギターが弾けない。だのに、楽器屋さんでぼんやりギターを眺めていたら、「大槻ケンヂさんですよね?試奏されますか?」なんて聞かれてしまう。ギターの持ち方すらよくわからない、コードなんて知らないのに。「今見てらっしゃったゴダンなんかはほら、ゲインをここで調整できるのがものすごく便利で・・」と言われて、ゴダンってなんだ?ゲインってなんだ?どっちがメーカー名でどっちが部品名?ってなもんだ。

それからいろいろあって、彼はギターを練習し始める。教則本を見ると、レミオロメンやコブクロやゆずの曲が載っているが、オーケンはそれらに全く聞き覚えがない。ミュージシャンなのに!!「いとしのエリー」をみて「あ、知ってる!」とつぶやく始末だ。

なんだかんだで、それから様々な人生の荒波もあり、その中で彼はギターの練習を続ける。ついには弾き語りライブまで始めるのだ。人のライブに弾き語りゲストとして呼ばれるようにすらなるのだ。下手だけど。

40代からでも、新しいことを始められる。そして、それは孤独を癒やし、新しい世界を広げる。あちこちぶつかりながら、苦労しながら、前へ進むオーケンはなかなかいい。がんばれ、オーケン。ギターなら、聞くぞ。

ちなみにこの本は「いつか春の日のどっかの町へ」と改題して文庫化されている。

2017/3/15