きつねのゆうしょくかい

きつねのゆうしょくかい

2021年7月24日

204

「きつねのゆうしょくかい」安房直子 講談社

 

低学年向きの童話。人間になりたいと思っている女の子がおとうさんにお願いして、人間をお招きする夕食会の準備をする。おとうさんは町へ行って人間を夕食会に誘うのだが、なかなか誰も相手にしてくれない。そんな中、やっと何人かのお客様が見つかり、みんなで夕食を囲むのだが・・・。
 
うーむ。ほのぼのした優しい童話、という感想を述べればいいのかもしれないけれど。
 
狐はなぜ人間になりたいのだろうか。人間に憧れる狐ってそんなに何匹もいるのか。そして、みんなが人間のふりをしながら、人間みたいに夕食を囲んで、本当に楽しくてしあわせなんだろうか。
 
大人に憧れる子どもの背伸びした姿を描いたのだと考えればいいのかもしれない。というアイディアも浮かぶには浮かぶ。だが、何冊か読んできて、私は思う。安房直子といいう人は、「私は本当の私ではない」「この世は思うようには行かない」「運命とは理不尽なものだ」という気持ちを抱え続けていたのではないか、と。
 
私には、読み終えて、むしろ切なくなってしまう物語だった。

2015/3/22