医者に殺されない47の心得

医者に殺されない47の心得

2021年7月24日

215
「医者に殺されない47の心得
医療と薬を遠ざけて、元気に、長生きする方法
近藤 誠 アスコム

「抗がん剤は効かない」以来、ずっと考えているけれど、結論が出ない。この本の帯には「病院に行く前に、かならず読んでください」とあるけれど、私の身内はもう乳房を全摘してしまった。あと数週間で術後の治療方針が決まる。

人は必ず死ぬ。だとしたら、つらい思い、苦しい思いを出来るだけせずに残された時間を過ごして欲しいと私は思う。高齢であればあるほど、辛い治療などしないで過ごして欲しいと願うのは当たり前のことではないだろうか。

勘三郎も、逸見政孝も、医療に殺された、と私は思っている。医師を信じる、任せる、とは言いなりになることでもある。標準治療を当然のように勧められたとき、私たち「素人」は一体それをどんな確信を持って断れるのだろうか。

抗がん剤治療を拒否するように私は言いたい。けれど、その結果、がんが転移して早期に亡くなるようなことがあった時に、私は責任をとれるのだろうか。お前のせいで、と言われた時に、そうではない、抗がん剤治療を受けたらもっとひどいことになっていた、と私は確信を持って言い切れるのだろうか。

この本を読むと、抗がん剤を拒否するのは、もう自明の理のように思えてくる。そればかりか、早期発見も必要なければ、人間ドックもデメリットばかりである。コレステロールは高めでいいし、血圧だって、歳を取れば多少高いほうが安心だし、たまごや脂肪分はしっかり摂ったほうがいいことになる。いったい、何が本当なのか、全然わからなくなってくる。

私は人間ドックの結果を受けて、禁酒し、食べ物もうんと節制している。おかげで前回の人間ドックの数値はかなり改善されていた。私は、薬を飲みたくないからこそ、食生活と運動にものすごく神経を使って過ごしている。

でも、この本によると、数値が良くなることと、体調が良くなったり、寿命が伸びることはあんまり関係がないみたいだ。人間ドックに丁寧にかかっていた人よりも、むとんちゃくで何もしなかった人のほうが寿命が長いデータがいくつも載っている。そして、薬を飲んで数値を改善した人のほうが長生きだったという事実はない、と言い切っている。

確かに血圧を下げる薬には、私はものすごく不信感を持っている。父が少し会わないうちに一気に老け込んだのは、血圧降下剤を飲みだしてからだ。ふらふらして、歩き方までおかしくなった。病院に行って薬を減らしてもらったら、一気に元気になった。でも、今でも少しは薬を飲んでいる。かかりつけ医が、絶対にやめさせないからだ。

風邪の度に抗生物質を飲まされることにも、私は疑問を抱いている。だが、同時に、おちびがインフルエンザの後に細菌性の感染症にかかってひどい目にあったこともあるから、やっぱりもらったら飲ませてしまう。一度に五種類以上の薬を出す医者は信用するな、とここには書いてあるが、そうなると、ほとんどの医者はダメなんじゃないかしら。

いろいろな持病があって、病院と縁を切ることはできない我が家である。そして、医学の発展の恩恵にはたしかに預かっていると感じている。最先端医療に期待する部分も大きい。けれど、その一方で、医療が人を殺すこともあるのだと考えている。

抗がん剤治療を拒否しろということは、病気と向き合う患者のストレスになるのか。そして、それによってがんが再発し、寿命を縮めるのか。それとも抗がん剤を受けて体力を失い、衰えていくとしても、それが最後には回復につながるのか。私はまだ判断できない。結論が出ない。わからない。

2013/3/26