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「傑作はまだ」瀬尾まいこ エムオン・エンタテインメント
「そして、バトンは渡された」の瀬尾まいこである。あの本について私は「おとぎ話である」と書いた。「そして、しあわせに暮らしましたとさ」というお話である、と。で、この本も、実はおとぎ話である、と思う。誰も桃から桃太郎が生まれるなんて思わないし、まさかりかついで熊と相撲取りに行く子どもがいるとも思わないが、だからといって、そういう物語を否定するひとはいない。で、読み終えてほっこりいい気分になれば十分嬉しい。
こんなこと、ありっこないよな、と読み終えて思うのであるが、だとしてもいいじゃないか、いい読後感だよなあ、としみじみ思うのである。ひとって捨てたもんじゃない、とか、いくつになってもひとはやり直せる、成長できる、とか信じたくなってくる。
悪い人が登場しない、というのもすごくいい。世の中には悪人だって本当はたくさんいるが、そんなの関係ない。しあわせな物語があったっていいのである。
読み終えたら、大福とかりんとうと揚げ出し豆腐が食べたくなった。いいお話であった。
2019/11/14