友情

2021年7月24日

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「友情」平尾誠二・恵子 山中伸弥

 

2016年、52歳の若さで亡くなったラグビーの監督、平尾誠二とノーベル賞受賞科学者山中伸弥との友情の記録。四十代半ばから男同士の友情を、なんの利害関係もなく育んだ二人の出会いと闘病の様子を取材と対談で描いている。
 
山中先生は有名だし、たまにNHKの科学番組などで、iPS細胞や遺伝子などについて、わかりやすくウイットに富んだ解説をなさっているのでよく知っている。平尾さんは、私はラグビーを全然知らないけど、夫がたまに見ていることがあって、なんかかっこいい人だという印象だけがあった。
 
山中先生も大学時代にラグビーをやっていらして、その頃から平尾選手のファンだったそうだ。ふたりは対談で出会ってすぐ意気投合し、親友になる。平尾氏ががんを宣告された時、すぐに治療法を相談したのは山中先生だった。山中先生は調べられる限りのことを調べ、もし自分が同じ病気だったら、何を選択するか、を基準に真剣に闘病に寄り添う。結果、平尾氏は亡くなり、山中先生は「治してあげられなくてごめん」と泣く。が、平尾氏は最後まで冷静で、運命を受け入れていた。なんと立派な最期だったことだろう。
 
平尾氏に山中先生が教えられた「人を叱るときの4つの心得」が素晴らしい。
 
 プレーは叱っても、人格は責めない。
 あとで必ずフォローする。
 他人と比較しない。
 長時間叱らない。
 
いやはや、これ、子育ての鉄板にもなりうる名言ではないか。また、こんな言葉もある。
 
 しばかれるとか怒られるとか、外発的なプレッシャーでやらされているチームというのも、ある程度までは上のステージに行けるかもしれないけど、絶対に一番にはなれないです。なぜなら、「ミスしたらあかんモード」に入ってしまうから。
 
平尾夫人の恵子さんのこんな言葉も残されている。
 
 「先生、ボスザルの条件っていうのもあるんですよ。知ってますか?」
 と、主人が話し始めました。
 「親の愛情を受けて育った。雌ザル子ザルに人気がある。離れザルになるなどの逆境を 経験している。ボスザルになる条件ってこの3つなんですよ」
 
平尾誠二、魅力的な人だったのだなあ、と思う。
 
       (引用は「友情」平尾誠二・恵子 山中伸弥 より)

2019/6/14