すごいぞプンナちゃん

すごいぞプンナちゃん

2021年7月24日

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「すごいぞプンナちゃん1~3」いとうひろし 理論社

「へそをまげてもピクニックのまき」「あっちこっちでへびさがしのまき」「ぼうけんダ・ダーンのひみつのまき」の三巻。

いとうひろしというと「だいじょうぶ、だいじょうぶ」を思い出してしまう。あれはとても美しい作品だ。素晴らしいと思う。だけど、美しすぎてつらいところがちょっとある。あんなふうに優しく温かいばかりじゃいられない、と、どこかで思ってしまう嫌な私である。

「ぼくたちけっこうすごいかも」で人生の暗部(?)についてちょっと言及したが。悪いことを言ったり、誰かを嫌いになったり、いけないことをしたりするのが人間である。(あの本ではかぶとむしだったりしたけどね!)この本のプンナちゃんは、結構、嫌な奴だったりする。おともだちのヘンナちゃんのことが好きじゃないし、プレゼント貰っても、ポイっと捨てちゃったりもする。嫌なことは嫌なんだという姿勢がはっきりしている。それでいて、自分の都合のためには態度をころっと変えたりもする。だけど全然にくめない。

途中でヘンナちゃんと仲良く遊んだりするので、やっぱりいい子だな、とか、みんなと仲良くできてよかったね、みたいな大団円に持ち込むのかとおもいきや、やっぱり嫌なもんは嫌なのである。そこんとこが、おもしろい。というか、そうだよね、と思う。

優しい気持ち。仲良くすること。もちろん、素晴らしい。でも、子どもってそんなにきれいじゃない。我儘だし、自分のことばっかりだし、飽きっぽいし。大人はいい子が好きなんだもんな、と子どもは思っている。悪い子の自分を何とかごまかそうとしたり、隠そうとしたりする。でも、プンナちゃんはなかなか堂々としている。そこが気持ちいい。いいじゃん、これ、って思う。

嫌なところ、悪いところ・・・いや、それは本当は嫌だったり悪かったりするんじゃないかもしれないけど、とにかく、公にはあまり認められないようなところ、もひっくるめて全部、自分である。そういう自分でもいいや、と受け入れて、自分を生きていくこと。人間が成長するというのは、よりよく変わっていくことというよりは、ダメな自分を受容し受け入れる勇気を持つことなのかもしれないと私はときどき思う。

自分を十分に楽しんでいるプンナちゃんは、そういう勇気を見せてくれている、のかもしれない。50歳を遠に過ぎたおばさんに、いいこと教えてくれたね、と思う私である。

2015/2/17