ひぐれのお客

ひぐれのお客

2021年7月24日

200

「ひぐれのお客」安房直子 福音館書店

 

短編が六編とエッセイが一編、収められています。
 
次回の読書会のテーマが安房直子で、一度も読んだことがなかったため、じわじわと読み進めているのだけれど。この人の物語はどれも読み終えて途方に暮れるというか、どうしたら良いかわからなくなって、呆然としてしまうものが多い。
 
「白いおうむの森」はストーリー展開が、昔読んだみたいなちょっと古びた感じがあった。それはそれで味わい深いのだけれど、最後に主人公が望んだことは全然叶わなくて、置き去りにされたまま。
 
「銀の孔雀」は、機織りの上手な青年が、依頼主には緑の孔雀の旗を織れと言われたのに、突然現れたきれいなお姉ちゃんたちには銀の孔雀にしろと言われる。両方の注文に同時に答えようと丹精込めて織り進めているうちに身も心も旗に吸い取られてしまって、幼い弟が残されたまま。
 
他の物語もそんな感じが多くて、善良で純粋な主人公が願いを叶えようとしてうっとりするような経験をするんだけど、最終的には叶わないでどうにかなっちゃうというか、よくわからないまま取り残されることが多い。運命って、思い通りに行かないし、自分の望みとは全く違うところで決まってしまうもんだね。この世は美しく儚く、そして悲しいよね、って言われているみたい。
 
物語を、良いとか悪いとか、何を得るとか得ないとか、そんなふうに評価してどうなるのって思うし、この人の物語に不思議と惹かれる部分はあって、たぶんそれは世界を美しく儚く描き上げるところにあるんだと思うけれど。
 
ただ、子どもにぜひ読みなさいねと薦めたいかどうかと問われると、ちょっと迷う。図太いおばさんになってから読めばいいじゃないの、なんて思ってしまう。

2015/3/11