ローラ・インガルスの大草原シリーズ

ローラ・インガルスの大草原シリーズ

2021年7月24日

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「インガルス一家の物語」
ローラ・インガルス・ワイルダー 福音館

以前、「大草原の小さな家」を読んだ話を書いた。あのときは、「大草原の小さな家」がこのシリーズの定番なのだと誤解していたのだが、あれは二巻目の本だった。で、残りの一巻目と五巻までをその後、時間をかけて読んだ。

前にもちょっと書いたかもしれないけれど、私は月に一回、とある場所で絵本アドバイザーをしていた。といってもその仕事は、絵本がたくさんある場所に行って座っていて、たまに質問されたら答えればいいだけなのであった。後はひたすらそこにある本を読み放題。絵本が多いけれど、ハードカバーの本も少しある。そこにこのシリーズがあったので、行く度にすこしずつ読み進めて、読み終えたら引越しが決まってこの仕事もおしまいになった。思えば、このシリーズを読むためだけに行っていたようなものだ。

大草原シリーズは、よくも悪くもアメリカという国の成り立ちや今もその国を支えている精神をしみじみと教えてくれる本だった。彼らは、なにもないところに自分たちの手で住む場所を作り、助け合い、町を作り上げていった。彼らを脅かすものがいたら、自分たちで身を守った。正直で、よく働くことが何よりも大切なこととされた。そうしなければ、生きて行けなかったからだ。彼らは団結し、怠け者や、自分たちを脅かすものを許さなかった。そして、強い誇りを持っていた。

その誇りに、疑いを持たないのは当然なのだろうと思った。彼らが、本当は別の者達の土地を蹂躙したのだとはこれっぽっちも思っていないのも、よくわかった。銃で身を守ることへの切実な思いもわかった。どこかで怠けたりズルをしている人がいたら、許せないと考えることもわかった。そうやって、アメリカはできたのだ、と思った。良くも悪くも。

学校で勉強なんかするよりも、家でお父さんの仕事を手伝うほうがずっと役に立つし面白い、と考える農場の少年、アルマンゾの気持ちもよくわかった。よく働く正直な若者は気持ちがいい。そういう理想的なアメリカ人が描かれていることが、よくわかった。

アメリカにはアメリカの正しさがある。日本には日本の正しさが、中国には中国の正しさがある。アフガニスタンにはアフガニスタンの正しさがあるのだろう。私たちは、自分を悪だなんて考えながら気持よく生きていくことはできない。誰にだって、その人なりの正しさがあって、その中で生きているのだ。この本を読み通したあとで、そんなアタリマエのことを、ぼんやりと考えてしまった。

さて。これにて今年度の読書記録は区切りをつけます。今年度は219冊でした。と言っても、上下巻モノも一冊と数えたり、かと思うと三十秒で読める絵本も一冊と数えたりだから、こんな数字は目安でしかないけれど。

明日は引越しだし、しばらく書けないかも。少ししたら、また新しい年度の記録をつけ始めます。それまでお元気で。

2013/3/29