みるなのくら

みるなのくら

2021年7月24日

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「みるなのくら」 おざわとしお 再話 赤羽末吉 画 福音館書店

 

年が明けたら高学年の教室で読んでみようかな、と思っている絵本。
 
鶯の声に誘われて山奥に迷い込んだ若者が、大きな屋敷にたどり着く。美しい娘に迎えられ、もてなされるのだが、翌日、ちょっと家を開けるからと留守番をたのまれる。十二のくらがある。十一までは見てもいいけれど、十二のくらだけはみるな、と言い残される。
 
一のくらはお正月。二のくらは節分。三のくらは桃の節句。蔵の中は四季の美しい光景が広がる。十一のくらまで見た若者は、十二のくらの前で、見るなと言われたことを思い出すが、我慢できずに見てしまう。そこにはうぐいすが一羽いて、「とうとうみてしまったんですね」と飛び去ってしまい、すべては消えて、若者は山奥の林の中に一人で立っていた、というお話。
 
見るなと言われると見たいよね。ましてや十一までいいけど最後だけダメよなんてひどすぎる。それだけ、誠実さを問われるということなんだろうけれど。
 
若者に恋をしたうぐいすの物語。相手の誠実を確かめようとして、裏切られる。なんか深いなあと今頃になってわかる私。男を試す女。女を裏切る男。・・・・って、そんなどろどろを子どもたちに見せたいわけじゃないんだけれど。
 
一つ一つの季節の絵が細かに美しく懐かしく、読み聞かせるというよりは、手にとってじっくり眺めてほしい絵本かもしれない。赤羽さんの絵は、なんと静かで美しくあたたかいのだろう。

2015/12/2