オバ道

2021年7月24日

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     「オバ道(OBA-DOH)」 神谷ちづ子 早川書房

世界中すべての女性がオバサンになったとしても、自分はオバサンになるなんて思いもよらかかった作者。でも、オバサンになっちゃったんだ、と自覚して、正しいオバサンの生きる途を書いたのが、この本。

もう若さを誇ってはいけない(もし若いと言われたとしても、それは、「歳の割には」でしかない)。
温泉に行くと、若い子たちを敵にまわすことで、オバサンたちは結束する。
同窓会で、元マドンナだった女子は、今でもモテる。
などなど、オバサンの話題が満載。

面白いのは確かなんだけど、どこか既視感が。というのも、この手の話題は、古くは佐藤子が、佐野洋子が、そして、群ようこが、最近ではサイバラさえ、あるいはある意味では林真理子が、というかあらゆる女性作家が一度は書かずにはおられないテーマなのだ。それぞれの作家が、独自の切り口で、オバサンになることについて、語っている。それに比して、と言っちゃあ失礼だが、この本に載っている話題は、もちろん、どれもなるほど、と頷けはしても、どこか、平凡・・・というか、ありふれた話でしか無いように感じられる。言ってしまえば、オバサンたちが二、三人集まれば、いつも話してるような内容なのだ。

この人、夫の仕事について、海外での生活が長かったという。その経験をもっと活かして書けばいいのにな。実際、最後の章「イタリアのオバサンはなお楽し」が、一番私は楽しかった。自信と貫禄に満ちた、大人の女を満喫するイタリア女性についての生活感あふれる文章こそ、この人ならではのレポートだ。

「キラキラ輝いている私・症候群」という章に書いてあったように、この人は、周囲から、キラキラ輝いて見えることを求めるタイプの人間ではないかと感じられる。もしかしたら、ありふれた話題をつい書いてしまうのは、「そのほうが受ける」「共感を得られる」という計算が働いているからかもしれない、なんて、不遜にも私は分析してしまう。周囲に迎合することなく、ほんとうに自分が感じるところ、自分だけの価値観を書いたら、もっと面白くなっただろうなあ、と、ちょっと思ってしまったのだ。

せっかく、ピンヒールを脱いで、楽なウォーキングシューズで歩く自分をゆるせるようになったのだもの、もっともっとそっちに行こうよ、って誘いたくなる、オバサンどっぷりの私なのでね。

2011/5/26