ガウディの伝言

「ガウディの伝言」外尾悦郎

ガウディって、よく知りませんでした。
なんだかぐにゃぐにゃした不思議な建築をする人。
ちょっと、どっか行っちゃってる様な、芸術家。変人。
そんなイメージが、ありました。

建築オタクの夫が「うーん、予想以上に面白かったなあ」とつぶやいているので、手を出してみたら、ホント、予想以上に面白くて。ガウディのこと、何も知らなかったなー、って思いました。

作者は、バルセロナでサグラダ・ファミリアの彫刻を担当して、今もこの建物を作り続けています。ガウディは、江戸時代の終わりごろに生まれた人だから、なんとも気が遠くなるお話です。

サグラダ・ファミリアって、いつ出来上がるとも知れずに、いまだに作られ続けているとか、実は図面も残っていないらしいとか、そんな断片的な知識だけがありました。んなもん、どーやって完成させるんだ?酔狂な・・。と思っていたけれど。

ガウディの建築は、確かに図面では表し難い。そして、彼はいつも模型を作り、実際に現物を作りながら職人に教えて行ったそうなのです。そして、訳の分からないように見えるつくりは、実は、機能的で合理的で、しかも象徴をこめたものであること、曲線は直線により合成されていること、あの時代にエコロジカルなものの考え方や、プレキャスト作りの発想が彼にはあったことなど、もう、目からウロコがぽろぽろ落ちていきます。思いつきで作られているように見えるものが、全て数学的に緻密に計算されていることが、後々の研究でわかり、図面が残されていなくても、彼がどのようなものを作りたかったかが、論理的に導き出される。それは、とてもすごいことです。

作者は26歳のとき、石に魅せられて、バルセロナへ行き、ガウディの弟子だった人に頼み込んで、研究生のような立場から、サグラダ・ファミリアに関わり始めます。そして、以来、30年近く、彫刻を掘り続け、サグラダ・ファミリアを作り続けているのです。

ガウディも、作者も、自分の道をまっすぐ進み続けた人たちです。頭が下がります。いい加減な、おちゃらけた、いつも自分が楽しい事だけを求めている私。だからこそ、こういう人たちの存在に、勇気付けられます。というのは、傲慢なのでしょうか。

2007/11/14