226
「グリフィンとお茶を~ファンタジーに見る動物たち~」
荻原規子 徳間書店
「空色曲玉」でデビューして以来、ファンタジーを書き続けている著者が、ファンタジーに登場する動物について書いたエッセイ。
彼女のエッセイは、論理的で、明快で、とてもわかりやすく、楽しい。自分が作家になるなどとは夢にも思っていなかったこと、子ども時代にヒヨコを育て上げたこと、カエルの物語を書いていたことなどのエピソードから人となりが伺えるのも、たいそう興味深い。
彼女が最初に出会った物語の本が、少年少女向けの名作文学全集の一冊「南欧編Ⅰ『ピノッキオ』『ドン=キホーテ』『クオレ』」だった、というのには、笑ってしまった。私も、同じだったからだ。
「山月記」を語った章が印象深い。受験勉強をしながら、大学に入ったら児童文学ファンタジーを創作しようと彼女は考えていたそうだ。だが、入学後は混声合唱団に入った。そこで、それなりに楽しみつつも、このままでは創作ができないのではないか、かかわる仲間を求めず、厳しい批評を避けていたら、「山月記」の虎になってしまうのではないか、と思ったという。混声合唱団の斜め向かいにあったのが、W大学児童文学研究会の、ぼろっちい部室だったのである。そしてある日、彼女はそのドアをノックした。そこから、彼女の作家人生は始まったのである。
よかったなあ、そこに、部室があって。と、私はしみじみ思うのであった。
2012/3/27