57 「トラちゃん」 群 ようこ 集英社文庫
もう20年ほど前に読んだんじゃないのかなあ。最近、おちびに薦めてみようと思い、その前に、と読み返してみた。
作者の弟が縁日の金魚すくいですくって来た金魚たちのうちの一匹が、凄まじい生命力を持ち、スパゲティミートソースなどをばくばく食べて、大きな鯉のように育って行った「金魚のよしこちゃんの話」は、記憶のとおりだった。初めて読んだときは、あまりのエピソードに、声を上げて笑ったものだったが、さすがに今回は、そこまで笑わないなあ。私の感性が鈍ったのか、群ようこ節に慣れてしまったのか。
十姉妹のビンタちゃんや、インコのピーコちゃん、何代にも渡る猫のトラちゃんたち。群ようこも、その弟やお母さんも、本当に動物が大好きなんだなあ、と改めて思う。飼ってやっている主と、飼われているペット、という関係を超えて、互いに尊重し合い、認め合い、愛情を交し合っている対等の関係がすごい、としみじみ思う。
こんなに動物に愛情を注ぐのに、人間のオスと暮らそうとは思わないんだなあ、人間の子どもを育てたいとも思わないんだなあ、群ようこ、と、ちょっと思ったりもする。それはそれで、また、別の話なんだろうけれど。
2011/6/19