愛国とノーサイド

愛国とノーサイド

2021年7月24日

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「愛国とノーサイド 松任谷家と頭山家」延江浩 講談社

頭山満は、戦前、玄洋社という結社により日本の右翼の一大源流を作った男である。軍国主義を先導した右翼の親玉というイメージしかなかった彼を違った見方で見るようになったのは、森達也の「もうひとりのラストエンペラー」を読んでからである。アジア主義者であった頭山は、金玉均や孫文、蒋介石、インドのインドのラス・ビハリ・ボース、ベトナムのファン・ボイ・チャウなど、日本に亡命したアジア各地の民族主義者・独立運動家への援助を積極的に行い、中江兆民、吉野作造、大杉栄や伊藤野枝、広田弘毅、犬養毅などあらゆる立場の人々と交流があり、広い視野を持って日本の将来を思う人でもあった。そんな頭山満の孫娘は松任谷健太郎という男と結婚した。この本は、頭山家と松任谷家の系譜を置いながら、歴史を辿った物語である。

六次の隔たりというのだそうだが、友達の友達の友達の・・・と仲介していくと、六人目で世界中の人と繋がりができるといわれている。この本は、頭山家と松任谷家の人々を追いながら歴史を描いているのだが、結果としてあらゆる分野、あらゆるジャンルの人間がこの両家に纏って登場してくる。六次の隔たりを地で行くような本である。

松任谷家と言えば、松任谷正隆で、だから、松任谷由実も登場する。石原慎太郎、三島由紀夫、堤清二、川端康成、坂本龍一、寺山修司、ドナルド・キーン、水森亜土、吉田拓郎、安井かずみ、加藤和彦、美輪明宏・・・。歴史をたどれば、大隈重信、神近市子、平塚雷鳥、坂本龍馬、西郷隆盛・・・。終いには、私の友達のお兄ちゃんまで出てきた。だから、「・・の妹の友人」という隔たりで、私にもちゃんとつながる。

だからどうなんだと言えばそれまでだが、2つの家の系譜を辿って歴史を追うという視点が面白い本であった。

2018/2/19