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「ミュージック・ブレス・ユー」津村記久子 角川書店
授業中やアルバイト中以外ほとんど頭からヘッドホンを外したことがないアザミ。CDを毎日聞き、何を聞いてどうだったかを記録し続ける。歯の矯正機のブレースは黄色と黒。歯科医が阪神タイガースファンなのだ。
じっとしてられない、なかなか勉強が出来ない、将来のことなんて考えられない、音楽について考えることは、将来について考えることよりずっと大事。
小学生の時、病院で診察を受けた。それからアザミは特に何かを我慢したり、強制されたりすることもなく、好き勝手に生きてきた。両親は、好きにしたら、といつもいう。
たぶん、何らかの発達障害の診断を受けた子の話ではあるのだろうけれど、アザミはいきいきしていて、かっこいい。自分の好きなことを知っているし、どうすればいいかも知っている。
まともで頭のいいはずのチユキなんて子も、正義感が強すぎて、とんでもない行動に走ったりする。彼女には彼女の論理がある。なにが正しくてなにがまともで、何があるべきすがたなのかなんて、わからない。
とりとめもない青春の一時期の物語だけど、きらきらしている、と思う。
どうしてこんなふうに分かるんだろう、なんでこんな物語が書けるんだろう、と思う。
津村記久子、すごいわ。
2014/10/17