リンドグレーンを読みふける

リンドグレーンを読みふける

2021年7月24日

「赤い鳥の国へ」

   
「おもしろ荘のリサベット」
「雪の森のリサベット」
「クリスマスをまつリサベット」
「サクランボたちの幸せの丘」    リンドグレーン

パルティオのお友達が、最近リンドグレーンを読み始めて、面白いと書いてくださいました。刺激を受けて、私もリンドグレーンに、再び、熱中しております。再読もあれば、新たに翻訳されたものとの出会いも。

「赤い鳥の国へ」は「はるかな国の兄弟」などへ連なっているであろう、美しい兄弟の物語です。彼女の描く兄弟愛は、いつだってすばらしい。なぜ、うちの兄弟は、けんかばっかりなのかしら・・。それはともかく。決して不幸ではなかったけれど、親の願うような子どもではいられない自分に鬱屈していた私にとって、リンドグレーンの物語の世界は、「赤い鳥の国へ」のミナミノハラのような役割を果たしていてくれたんだなあ、としみじみ思います。

リサベットの三冊は、どれも、楽しい、楽しい。おねえさんのマディケンが主人公になった本は子供時代に読んでいましたが、リサベットはお初です。えんどう豆を鼻に入れて取れなくなって「スイートピーだといいわね」といったり、先生のところで取ってもらおうとして、豆が見つからなかったときのせりふなど、完全に私好みです。こういうユーモアのあり方が、私は本当に子どものころから、大好きだった。困ったこと、つらいことだって、力づくで楽しんじゃう、笑っちゃう姿勢を、私はリンドグレーンに習いました。

それにしても、リンドグレーンの物語に出てくる親たちは、みな、子どもに暖かく、優しく、愛情にあふれています。いたずらをしても、こんな風に受け止められたら、誰だって、悪い子ではいられないでしょう。ああ、こんな親になれたら。

「サクランボたちの幸せの丘」は、訳者あとがきにもありましたが、やかまし村シリーズの続編とも考えられる、村での楽しい生活の物語です。パープロの恋は、胸が痛くなるようだわ。

リンドグレーンが、10代後半を、憂鬱な気分で過ごした、というエピソードを、私はいつも不思議に思ってました。19歳で未婚の母になった経緯もふくめて。

でも、これは、想像に過ぎないけれど、彼女は、つらい恋があったのだろうなあ、本当に好きな人とうまくいかずに、ちょっと違う相手と仲良くなってしまった時期があったりして、そういうことへの後悔が、憂鬱な十代になったのだろうなあ、と。この本を読んでいると、なんとなく思うのです。19歳で生んだ子の父親とは、彼が亡くなるまで交流はあったみたいなのに、結婚しない道を選択した彼女。相手の男性は、クリステルだったのかしら。

ずいぶん昔に書かれた物語だけれど、登場人物たちは、誰も彼も生き生きとして、ちっとも古臭くありません。そして、私のそばにいて、笑ったり、話しかけたり、いたずらしたり、遊んだりしてるみたいです。この人たちがいる限り、私も大丈夫。ちょっと疲れたり、体が痛かったりしても、がんばって、明るく先を見て生きていこうと思える、そんな勇気がもらえる物語たちです。

2008/10/10