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「三四郎はそれから門を出た」 三浦しをん ポプラ社
「悶絶スパイラル」で想像と違う三浦しをんの実態に触れ、がっかりしていた夫ではあるが、懲りずにこれを読んでいた。どうだったか尋ねると「まあまあ」というので、では、これは好みだったのか、それとも、真面目で物静かなしをんちゃんを諦めた結果なのか。まあ、それはどうでもいいけれど。
本好きだけに共通する空気があるとしたら、この本は、それがものすごく色濃い。好みの本屋さんが近いので引っ越せないとか、具合が悪くても、熱があっても本屋に行きたくなるとか、そのあたりの気分は実によく分かる。この本は、三浦しをんの本にまつわるエッセイが中心に集められている。
しをんさんは結構な漫画読みだが、活字の本も実に大量に読んでいる。この本を読んで、図書館に何冊もリクエストした。ということは、読んだ本の楽しみを、ひとに伝える実力がすばらしい、ということでもあるのだなあ。
学生時代に、面白いと思いながら、あまりの活字量に頓挫してしまった大西赤人の「神聖喜劇」の面白さについて書いてあって、おお、再読しなければ、今度こそは最後まで行き着かねば、と心に誓った。でも、どこまで読んだか覚えてないし、あれをまた一から読むのか?と既に気分は萎えつつあるのだが・・・。
生活のすべてを本に支配され、振り回されているような気がしてならないが、それで特に不満もない。本を読むことがすなわち、私の幸福であるからだ。
(引用は「三四郎はそれから門を出た」三浦しをん より)
2013/1/24