英国一家、日本を食べる

英国一家、日本を食べる

2021年7月24日

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「英国一家、日本を食べる」 マイケル・ブース 亜紀書房

以前に読んだ「米国人一家、美味しい東京を食べ尽くす」は、本書が先にあってこそ書かれた本であるらしい。ということで、さきがけであるこの本は、英国人のトラベル・フード・ジャーナリストとその家族が東京、北海道、京都、大阪、福岡を食べ歩いた記録である。

別に比べる必要はないのだが、「米国人一家」のほうが庶民的で家族的であったのに対し、こちらはジャーナリストとしての地位が物を言ったのか、セレブでリッチで権威的だ。そして、家族は別行動を取ることが多い。(子どもたちは、基本、食よりもポケモンセンターに夢中である。)

日本料理の関東の雄、服部栄養専門学校に取材を申しこめば、服部幸應氏が自ら案内を買って出て、選ばれたごくわずかの人にしか知られていない特別な料理店に連れて行ってくれる。関西の雄、辻調理師専門学校に行けば校長の辻芳樹氏がすべてを見せてまわり、有名なレストランに招待してくれる。それらの店は最高の料理を出し、非の打ち所がないのだそうだが・・・・だがしかし、我々のような一般庶民にはあまりに縁遠い「日本料理」ではなかろうか。それを褒められたところで、私たちの食生活にはあまり関係がないような気がしてしまう。

筆者は、有名な五人のシンガーが二つに分かれて料理の腕を競う人気料理番組の取材もする。途中、急に女装したりする「慎吾」はバスター・キートンみたいな雰囲気があって表情の作り方がうまく、「正広」もカリスマ性があって芯が強くてエネルギーの塊だと評される。だが、その他の三人は、彼から見ると煮え切らない感じだったり、しかめっ面だったり、ぼんやりしている風だったりであまり目立っていなかったという。天下のスマップも、英国人ジャーナリストから見たらそんなもんなのかとちょっとおかしい。

それにしても、「米国人一家」を読んだ後は、あれが食べたい、その店に行ってみたい、とあれこれ思ったものだが、これを読んでもどこかに行きたくなったり何かを食べたくなったりはしなかった。それは、私がバリバリの庶民だったということなのだろうか。
2014/12/29