世にも奇妙なマラソン大会

2021年7月24日

「世にも奇妙なマラソン大会」高野秀行 本の雑誌社 1

読んでみたら、ほとんどが、一度「本の雑誌」に連載した内容だったので、実は既読でした。とは言え、高野さんは、やっぱり面白いです。

腰痛解消のため、ジョギングを初めて、いつかはマラソンを走ってみたい、と思っていただけの作者が、焼酎でいい気分になった勢いで、「アフリカ・中東 マラソン」とネット検索したら、出てきたのが「サハラ・マラソン」。サハラ砂漠を走るんですな。その開催まで、もう三週間もない。で、主催者に、「自分も参加できる?」とお気楽にメールしてしまったら、返事が来た。

「やあ、ヒデユキ。君はまだ間に合うよ。十九日の夜九時にマドリッド空港の第四ターミナルに集合だ。ツアーの費用は八百五十ユーロ。当日に払ってくれればいい。アルジェリアのビザと飛行機のチケットを取るからパスポートの番号を教えて。じゃ、またね。」

(「世にも奇妙なマラソン大会」高野秀行 より引用)

そこで、作者は妻に、俺、ちょっと、サハラでマラソン走ってくる、というのである。は?誰が走るの?と呆れる妻。でも、新婚4ヶ月でミャンマーのジャングルで行方不明になったこともある高野氏の妻だけに、あっさり許可が出た。というわけで、突然、彼は、世にも奇妙なマラソン大会に参加することになったのだ・・・・。

表題作の他にも、ブルガリアで年配のオヤジに迫られる「ブルガリアの岩と薔薇」や、一度強制退去させられたインドに入国するため、パスポートの氏名を変えようと企む「名前変更物語」など、いくつかの物語(?)が収録されています。どれも、本人、大真面目なのに、ちょっとどこかズレている、間違っている、不思議なノンフィクション集です。

2011/4/1