光の教会へ その1

光の教会へ その1

2021年7月24日

「光の教会―安藤忠雄の現場」(平松剛 建築資料研究社)を読んで以来、光の教会と呼ばれる建物の現物を一度見てみたいと思っていました。建築オタクの夫も、関西にいる間に見られるものは見ておこうと考えていたらしく、先日、見に行こうと誘ってくれました。

光の教会とは、安藤忠雄の代表作の一つ、大阪府茨木市の日本基督教団茨木春日丘教会です。コンクリート打ちっぱなしの四角い建物。正面の壁全体に十字架がくり抜かれて、そこから光が射しこむのです。予約を入れておけば、週末の午後、建物の見学ができます。

土曜日の一時が予約の時間でした。我が家からは、阪急線経由でモノレールに乗り、万博公園から歩きます。せっかくだから、途中でおにぎりやサンドイッチを買って、万博公園内で食べようということになりました。

万博公園に入ると、さっそく、太陽の塔がお出迎えです。いつ見ても、圧倒される姿です。

太陽の塔と向き合って、お祭り広場に座ってお昼を食べました。実は私、歯医者で治療中。かみ合わせがうまく行かなくて、どうもうまく食べられないのです。そんな訳で、思ったよりも、食事に時間がかかってしまいました。

光の教会は、万博公園を突っ切った向こう側にあります。予約時間が迫っているので、少し早足で向かいます。広い広い公園。出口が限られているので、ぐるっと回らねばなりません。やっと公園を出て、一般道を歩きます。きれいな家が立ち並ぶ住宅街です。思ったよりも遠いので、ふうふう言いながら歩きます。一時ぴったりに、無事、教会に到着しました。

建物は、外側から見ると、案外、地味に見えます。

受付に名前を書くと、「どうぞご自由に見学なさってください」と、礼拝堂に案内されました。そのまま、係の方は受付に戻られ、まさに自由に見学させていただけました。

中に入ると、正面から光が刺し込んで、ほんとうに美しい礼拝堂です。

中は実にシンプル。後ろにパイプオルガンはありますが、後は僅かな照明と、椅子が並ぶばかり。見た限りでは、冷暖房の設備もありません。

本によれば、正面の十字に、安藤さんは、本当はガラスも入れたくなかったのだそうです。けれど、礼拝にはお年寄りも小さな子どもも来ますものね。さすがに吹きっ晒しという訳にはいかないでしょう。ガラスを入れたのは、妥協の産物だそうですが、やっぱり必要だと思いました。それに、ガラスがあっても、ちっとも邪魔にはなっていません。美しい光が刺し込んできます。

受付に戻ると、もう一つのホールも見せていただけました。こちらの方は、木の十字架が置かれた素朴な作りです。

礼拝堂より狭いので、日曜学校用なのかもしれません。

「冷暖房の設備はないのですか」と、受付の方にお尋ねしてみました。「無いです。冬はストーブを置きますし、着込めば済みますけれどね、夏は熱いですよ、窓もないし。サウナみたいなものです。」と、率直なお答え。「それがあの人のコンセプトだから。」と、淡々とおっしゃいます。「最初は、ガラスを入れないつもりだったくらいなんですよ。」ですって。ああ、やっぱりそうなんですね。

「こんなものもありますが」と遠慮がちに、絵葉書を出されました。サイン入りとサイン無しで300円違うのに、ちょっと笑いました。少し迷って、サイン入りを購入。

我々の後にも、お二人の見学者がいらしていました。この礼拝堂で毎週集まるのは、信者の皆さんには季節によってはご苦労もあるのでしょうけれど、全国から、こうやって見学者が集まるのは、何ものにも代えがたいことなのかもしれません。入り口にある、建物保存のための募金と、東日本大震災への募金と、献金の三つの箱に、それぞれ気持ちだけお金を入れて、教会を後にしました。

教会の角を曲がると、そこは神社です。いろんな神様がご近所つきあいなさっているのね。さて、そこから、もう一度、万博公園に戻りましょう。

2012/6/1