博士の長靴

博士の長靴

78 瀧羽麻子 ポプラ社

この作者はたぶん、初めましてだ。だけど、なつかしいような本であった。

四世代にわたる家系の、いろいろな人との関わりを描いた作品。最初のエピソード、まだ年若い女の子が仕事を一生懸命覚えてしっかり働こうとする姿だけで、もう、引き込まれた。中島京子の「小さいおうち」をちょっと思い出したかな。なんでもない日々、一生懸命生きる人たちの話は、それだけで好き。世代によっては、家族に迷惑をかけてもちっともそれを気にしないのほほん男も何度か登場するが、いるよなー、こういう奴ってさ、と思うくらいでそこまで腹が立たない(笑)。牧野博士を思い出しちゃったよ。

最初のお話に登場するみずいろの長靴が、あとからもう一度出てくる。それが、なんかいいんだな。家族って分かり合ってるつもりでわかってなかったり、かと思うと、驚くほど実はわかっていたり、いろいろあるよな、とつくづく思う。でも、人は、嘘ついたり騙したりしないでまっすぐ生きてれば、たいていのことは最後に分かり合えるんだと思う。そんなことも考える本である。

この作家をもう少し読んでみたい。そう思える一冊だった。