地球全史 写真が語る46億年の奇跡

地球全史 写真が語る46億年の奇跡

2021年7月24日

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「地球全史 写真が語る46億年の奇跡
写真 白尾元理 解説 清川昌一 岩波書店

子どもたちが小さな赤ん坊だったころ、よくわけもなく泣き続けることがあった。お腹が空いているわけでもなく、おむつが湿っているわけでもなく、どこかが痛かったり痒かったりするのでもない。とどのつまりは、眠いのに眠れないのが不快で泣いているのであった。

眠ければ寝てしまえばいいのに、と溜息をつきながら、私は赤ん坊を抱き上げ、揺すってやったり、背中を叩いてやったり、歌を歌ったりした。そうすると、いつの間にか、安心して眠り込むのだった。

私にも眠れない夜がある。体は疲れているし、あくびが次々と出て、明らかに眠いのに、眠れない。こんな時、誰かが抱き上げて揺すって歌でも歌ってくれたら眠れるのだろうかと思ったが、こんな中年のおばさんを寝かしつけてくれる人はどこにもいないのだった。

あまりに眠れないので諦めた私は電気をつけて、この本をパラパラとめくってみた。アメリカやヨーロッパ、オーストラリアにアフリカなど、世界中の地層の写真が、地球の歴史を見せてくれる。

地学が苦手だった私は、地層から何かを見つけるロマンを持っていない。けれど、この本の写真を眺めるうちに、気が遠くなるほど長い地球の歴史を僅かにでも想像できるような気がした。それから、後半部にある解説を読んでみたら、これがものすごく面白いのだった。

ただでさえ不勉強だった私は地学の基礎などほぼ忘れている。だからなのか、それともここ数十年の間に地学が進歩したせいなのか、まるで知らなかった事実ばかりに出会い、その地球の生い立ちに驚嘆した。そうだったのか!と、何度も何度も目から鱗が落ちる思いであった。

さすがに疲れと眠気があって、きちんと読み込んだわけではない。もっと意識が正気の時に、最初から本気で読みなおそうと私は決意した。そして、広大な宇宙の片隅の地球という星の46億年の歴史に比べたら、私を眠らせない理由など、実にちっちゃいちっちゃい、と心から思えた。だから、ちゃんと寝よう、と思った。そして、布団に入ったら、いつの間にか眠れたのだった。

中年のおばさんを寝かしつけるのは、この本だったのね。

2013/6/19