壽屋コピーライター開高健

壽屋コピーライター開高健

2021年7月24日

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「壽屋コピーライター開高健」坪松博之 たる出版

 

表紙を見て「え?これが開高健?イケメンじゃーん」と思ってしまった私。だれでも若い頃はきれいだったのね・・・とため息をつく。
 
開高健は壽屋、今のサントリーのコピーライターだった。後に山口瞳も入社する。芥川賞作家と直木賞作家が広告を打つ会社だったのである。
 
元々は開高の妻、牧洋子が壽屋に勤めていた。牧が妊娠出産し、ミルク代にも事欠くようになった。当時、開高はまだ学生、ハタチそこそこである。開高に文案を書かせ、それを持って牧は彼の才能を売り込んだ。サントリーの社長、佐治敬三は即座にそれを見抜き、彼を社員として受け入れた。以後、長きにわたって二人は友情で繋がれる。
 
この本はコピーライターとしての開高健の軌跡である。なんとセンスのいい、人の心を捉え、惹きつけるコピーばかりなのか。開高自身が登場するテレビCMを私は覚えている。幼心に印象に残るものだった。
 
サイドストーリーではあるが、サントリーがビールの製造に乗り出すまでの経過も描かれている。ドイツビールをたくさん調査して回ったが、最後にたどり着いたデンマークビールの旨さに佐治と開高が気がつく場面がある。これと同じ体験を、私もしている。ミュンヘンでさんざんビヤホールを巡ったあと、次に行ったコペンハーゲンの駅売店で瓶ビールの美味しさに感動したのだ。カールスバーグだった。佐治と開高も、カールスバーグを飲んだという。おお、好みが同じね、と嬉しくなってしまった。

2014/10/21