天の方舟

天の方舟

2021年7月24日

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「天の方舟」 服部真澄 講談社

日本のODAがどんなふうに使われているのか。たまに思いがけない方角から聞き及ぶことがある。バックパッカーのうわさ話や、辺境の地で個人的に活動している人から見ると、ODAはなんの役にも立っていなかったり、むしろ害悪をタレ流している場合がある、というのだ。

・・・ということを知っていて、なおかつ、この本を読むとやっぱり暗澹たる思いに駆られる。

最近読んで、なんだかなあ・・と思うことは、全部似たようなことにたどり着いてしまう。原発も、結局は同じ仕組。税金として集められた巨額のお金でどうやって私服を肥やすか。そこに話はつきつめられる。すべては、利権なんだなあ。

賄賂がまかり通るアジアやアフリカの現実を、皮肉を込めて描く書物をたまに見るけれど、日本だって、結局は全く同じなんだ、と思う。当然の権利として堂々と手を出す発達途上国の役人や官僚たちよりも、巧妙に掠めとっていく日本のやり方のほうが、むしろ醜いじゃないか・・と情けなくなる。

とは言え、この本は、物語なのだ。フィクションなのだ。わかってるけどさ。

服部真澄さんの本は、他にも何冊か読んだことがある。
どれも、深く調べてあって、すごい知識と教養に裏付けされているなあ、と感心するのだが、読み終えて、なんとなく、釈然としないものが残る。
この本も、そう。
こんな終わり方しかないのかなあ、と首をかしげてしまう。
だから、どうすりゃいいのよーん、と途方にくれてしまうのだ。

2011/9/13