女優で観るか、監督を追うか

女優で観るか、監督を追うか

2021年7月24日

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「女優で観るか、監督を追うか」小林信彦 文藝春秋

「『あまちゃん』はなぜ面白かったか?」につぐ週刊文春のエッセイをまとめた一冊。今回は題名のとおり映画の話題が多く載っている。が、私はあんまり映画を見ないので、その辺りは面白くないのね。

私が興味を惹かれたり、共感したりできるのは、やっぱり東京オリンピックに一貫して反対の姿勢を崩さないところや、芸人について語っている部分だ。「何か日本人が取り憑かれたようになるのが気持ちが悪い」という感想には私も全面的に賛成だ。新国立競技場問題について問題になるよりずっと前に、オリンピックは土建屋ビジネスと密着している、ときっちり指摘してもいる。まあ、これはわかりきったことではあるが。

小林信彦は、明石家さんまがお好きではないらしい。やかましくてうんざりするようだ。前作でも「関西芸人」という表現でさんまを批判していたし、この本では伊集院光がラジオでさんまを褒めていたことを苦々しく書いている。ご贔屓の伊集院までちょっと気に入らなくなってしまうあたりが面白い。そういえば、伊集院が以前、番組で「小林先生!!褒めるかけなすかどっちなんですか?」とラジオで尋ねていたのは、この事だったのかもしれない。

小林信彦は、偏屈で怖いおじいさんだから、リアルにお知り合いになりたいタイプではないけれど、こういう方がいつまでもお元気でいろいろなことに釘を刺す文章を書きつづけてくださることは、大事なことだと思う。我々は、ちょっと怖い先輩から、まだまだ教えてもらわねばならないことがたくさんあると思うのだ。

2015/8/24