妄想気分

妄想気分

2021年7月24日

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「妄想気分」 小川洋子 集英社

小川洋子のエッセイ集。エッセイというか、ほとんどつぶやきとしか言い様がないほど短い文章も収録されている。でも、それが彼女の雰囲気を伝えている。

「私の後悔」というなんでもない短文に共感した。彼女と私は同じ大学を出ているので、書かれている内容が実感を持って迫ってくる。卒業してから、一度も大学に足を踏み入れていないこと。学びたい学生にはいくらでも学ばせる包容力がある学校だったこと。けれど、居心地のよさに甘え、その包容力に気づくのに遅れ、貴重なチャンスを逃してしまったこと。

だけど、実際に学生時代に戻りたいとは思わない。今の私は、これまでの積み重ねでできているのであって、学校の中だけでは学べないものを得てきたことは確かなのだから。

とはいえ、いま、大学に戻れたら、全然違う勉強ができたのになあ、とは思う。あれを知りたい、これを深めたい、と思い、その余裕ができた頃には、もうこの年なのだなあ。だから、おばちゃんは、若者にあれこれいいたくなるのだ。うるさいなあ、と思われながらも。

2011/9/4