76
「幸いは降る星のごとく」橋本治 集英社
図書館で目があったので、つい借りてきてしまった本。何の先入観もなしに読み始めたら、あら、これって私のテリトリーだわ、と気がついた。はい、お笑い芸人の本です。女芸人の。
そう書いてあるわけではないけれど、この本の主人公は、あきらかにオアシズの光浦靖子と大久保佳代子だ。最後のほうで慌てたようにいとうあさこと椿鬼奴も登場する。
橋本治のこの手の小説を私は「蝶のゆくえ」で初めて読んで驚愕した。なんか、物凄くリアルなのだ。でありながら、感情的ではなく、実に淡々としている。これは極めて冷静な分析のみで描かれているからなのだな、と改めてこの本を読んで思う。
いったい、光浦靖子や大久保佳代子はこの本を読んだのだろうか。読んだのだとしたら、どんな感想を抱いたのだろうか。聞いてみたい気もするが、言いたくないだろうなあとも思う。まじめに答えても、おちゃらけても、どこにも救いがないような気がしてしまう。
そう。救いがないというか、この社会の中で、フツウの女がなんとなく生きていくことの生きづらさのようなもの、それでいてそれを生きづらいと感じていいのかどうかもわからないような、ぼんやりしたものを、あまりにもリアルに描いてしまっているように感じるのだ。なんでこんなに分かるの？と橋本治に尋ねたくなってしまうほどに。
エンディングは大団円・・・と言っていいのだろうか。なんだか取ってつけたようでもある。しかし、こうやって終わらせるしか終わりようがなかったのかも、などとも、つい思ってしまう。遠くから冷徹に眺めていると、こんなもんだよな、と終わらせたくなるんだろうか。
2013/9/12