戦争広告代理店

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2021年7月24日

「戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争」高木徹

故 米原万理さんのお勧め本。
以前、「カーラのゲーム」(ゴードン・スティーブンス)を読んで、呆然としてしまったことを思い出す。ボスニア・ヘルツェコビナで何が起きたか、を正確に言える人はいない。自分の陣営を正当化するために、相手がやったと見せかけて、自分の側を偽装攻撃し、たくさんの人を殺すようなやり方が、本当に行われていた場所だから。

紛争の、どちらが絶対的悪で、どちらが一方的な被害者であるなど言う決定を、本当にすることなんて出来るのだろうか。でも。国際社会は、セルビアを悪と位置づけた。そこに至る、あらゆる戦略を練って行ったのは、ルーター・フィン社というアメリカのPR会社である。

写真や映像は、真実を映す、様に見える。報道は、中立を保っている、かの様に見える。本当は、そんなことは、無い。ありえない。巧妙に、情報を操作し、世論を導くことなど、いくらでもできる。それは、ビジネスなのだ。何が正義かではなく、クライアントの要求にこたえることが、ビジネスマンにとっては大事な仕事なのだ。

日本の外交は、ほとんど絶望的だね、とこれを読んでも思ってしまう。こんなPR会社に太刀打ちできる外交官が、どこにいる?受験勉強に明け暮れて、大学卒業と同時に外務省に入って。こんな海千山千のPRマンに、対抗できるわけが無い。

それにしても。情報があふれるこの世の中で、何が真実かを見極め、選び取って行くことが、どうやったらできるのだろう。この間の「でっちあげ」もそうだけれど。私たちは、もっと賢くならなければいけないのだろうけれど、世の中は、進みすぎてしまったのかもしれない。

2007/6/17