日本の土

2021年7月24日

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日本の土 地質学が明かす黒土と縄文文化」山野井徹 築地書館

 

夫が帰宅するなり「帰りの電車で、これ、読み終えて感動しちゃったよ。」という。地質学の本だろ?それで感動するのかよ。不思議すぎたので読んでみた。
 
もともと、地質学なんて一体何が楽しいのかさっぱりわからないで生きてきた。高校時代、地学は最初から捨てていたしなあ。が、「タモリ倶楽部」や「ブラタモリ」で、タモリが度を超えた河岸段丘ラブを繰り返し表明したり、断層の楽しさを語ったりしているのを見て、なんとなくわからなくもないぞ、と思うようにはなっていた。
 
この本は、地質学の本なので、専門的なことがずらずら書かれていて、かなりとっつきにくいところはある。が、基本は「土ラブ」なのである。土って、空気や水と同じくどこにでもあるのであんまり気にされていないけど、せめてそれがどう生まれ、どう育ったか知りたい、という愛のある願いが根底にあるのだ。
 
主人公は「クロボク土」と呼ばれる黒い土である。異様なほどに黒いこのクロボク土はどこからどのようにして生まれたのか。それが最大の焦点である。それを解明するために、長い長い旅のように、作者はさまざまなことを考察して巡る。地球規模の話から黄砂の話、日本列島、地すべり、関東ローム層、ダーウィンとミミズの話、何故遺物は地中から発見されるのか、という当たり前のようで当たり前でない話(実はこれ、私が常々疑問に思っていたことなので、非常に面白かった)、表土について・・・・。そして、最後についに核心にたどり着くのである。
 
それが何かを書いちゃいたいなー、と思うほど、最終章には驚かされる。まるで推理小説のように、今までの考察がピタリとひとつの結論に行き当たるのだ。
 
なるほど、感動する。夫が最終章について、うずうず、言いたくてしょうがなかった気持ちが、よーくわかってしまった。

2016/3/3