119 伊予原新 新潮社
「青ノ果テ」以来の伊予原新である。理系の小説。今回もさまざまが理科的知識を背景に物語が進行する。
表題作は、死のうかと思っていた男をタクシー運転手が「月に一番近い場所」に連れていく話。少年がアンモナイトを探す話や、親戚の鼻つまみ者のおじさんが実はすごいギタリストだった話、まじめな主婦が家庭を捨てて山登りに行く話などなど短編六篇におまけが一編。私はアンモナイトの話が一番好きだった。
東大の大学院で地球惑星科学を専攻していたというからバリバリの理系の人。論文しか書いていなかったけど、論文は意味が一つの取れるように書く、あいまいな部分を削ぎ落していくのが基本だそうだ。そういう訓練が効いているのか、明瞭、明解な文章が読みやすい。それがこの人の持ち味だ。
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