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「樽とタタン」中島京子 新潮社
「夢見る帝国図書館」以来の中島京子。実はこちらのほうが前に書かれていたのかも。
主人公が小学校時代、学童保育代わりに放課後すごしていた小さな町の小さな喫茶店。そこで出会った小説家や歌舞伎役者、そのタニマチに、学者、マスターなどとの様々なエピソードが短編連作で描かれている。
おとぎ話めいた、どこまで本当で、どこまで妄想なのかがよくわからない、でも、そんなことはっきりさせる必要もない、幼い頃の思い出話。小説家には、一つだけ、尋ねられても答えなくて良い質問がある。その質問の対象になるような不思議な、暖かい物語の積み重ね。
中島京子のほんのり不思議な物語は、いつだって楽しい。
2020/9/15