洞窟ばか

2021年7月24日

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「洞窟ばか」吉田勝次 扶桑社

 

夫が借りてきた本。「クレイジージャーニー」の人だよ、と言うので読んでみた。
 
子供の頃から喧嘩ばかりして来て、高校に行ってもつまんねえ、と中退し、19歳くらいで巻き寿司を売る仕事についてすぐ失敗。その後飲み屋で働いて自分の店が持ちたくなり、資金稼ぎのために建築現場の下仕事を始める。なんでも請け負ったので売上がガンガン上がり、26歳で自分の会社を立ち上げる。俺の人生、このままでいいのか?と疑問を持って登山を始めるが、アウトドア雑誌でケイビング(洞窟探検)のクラブを知って参加、以後、洞窟にハマったという。なんだか過剰な人だ。
 
私は生粋の怖がり、臆病者で、しかも高所恐怖症だ。なんとこの人も高所恐怖症だという。洞窟なら高所恐怖症でもいいじゃないかと思いそうだが、下へ下へと降りていく洞窟だってあるわけで、ロープ一本でぶらんぶらんぶら下がりながら真っ暗な洞窟へ折りていくのはなかなかハードなことだろうと思う。
 
落石にやられて骨折したこともある、水の中を進んで溺れかけたこともある、洞窟の迷路に入り込んで迷子になりかけたこともある。それでも洞窟は楽しくてしょうがないという。そうか??怖くないのか??と、読んでいても、今ひとつその魅力がわからないのは、私が臆病者だからだろうか。
 
それにしても、未知のものを発見していくのが喜びである、というのはわかる気がする。今時どんな難しい山だって、ヘリコプターを飛ばせば上がれちゃうし、地球上のどこにいたってグーグルで見えちゃう。どこかどうなっているのか全くわからないのは、今や地底の奥深くか海の底深くくらいしかない。だとしても、体が嵌って二度と動けなくなったり、鉄砲水にやられたり、位置がわからなくなって地上に戻れなくなったりしたらと思うだけで怖くないのだろうか。
 
この人、洞窟探検をやっていて、自分が何も失ったものがない、と言い切っている。楽しいしいい事づくめなんだそうだ。そう言い切れちゃうのってすごい。
 
本当は宇宙に行ってみたくて、NASAにも二回くらいメールしてみたんだそうだ。相手にしてもらえなかったらしいけどね。こういう前向きなとこ、いいなあと思う。

2017/4/3