薄目を開けて生きるのも悪くはないけど(その2)

2021年7月24日

 
 
昼食後に抗生物質の点滴が始まります。炎症を防ぐためですって。血管の出にくい私は、針をさすのにひと苦労しました。看護師さんに「ごめんなさいね」と謝られてしまった・・・。
 
手術は四時頃というので、そんなにゆっくりなら、今日、家から来ても良かったじゃん、とまたまた拗ねながら、ついに四冊目に手を出してしまい、読み終えて呆然としていたら、ちょうどお迎えが。まだ三時だけど、前の人が早めに終わったので行きましょう、だってさ。なんと車椅子です。「歩いていけますよ。」と言うと、「まあ、決まりですから。」ですって。車椅子は、座っているとぐんぐん動いて、アトラクションみたいです。エレベーターに載って、手術室のドアも全部ウェルカム!という感じで開いて、なんかディズニーランドみたいね、と言ったら看護師が「緊張しないんですか?」だって。いやいや、緊張というか、まだ他人事みたいな気分でいますが、いずれ怖がりますよ。
 
少し待っていたら、オペ室が開いて、昨日おしゃべりしたおじ(い)さんが車椅子で出てきました。私を見るなり、「痛くなかったですよ!緊張はしたけど。」と教えてくれます。そうか、痛くなかったのか。いいタイミングで教えてくれるなあ、と感謝。そのまま中に入ります。
 
美容室の椅子みたいなのに座らされて、主治医が「では、よろしくおねがいします。がんばりましょうね。」と言ってくれます。はい、よろしくおねがいします。シャンプーするみたいに、椅子が倒されます。座り心地は悪くありませんか、と尋ねられるのまで、美容室みたい。顕微鏡を見る練習をします、と言われて何事かと思ったら、手術中、一箇所をずっと見ている必要があるんですって。2つのランプが見えるので、その間を見ていてください、と言われます。え?どこどこ?とぜんぜん違うところを見てしまった私。思ったよりも上の方にランプがありました。
 
点眼して、体に布をかけ、耳を覆い、目の周りを消毒して、また点眼して、目にシールを張ってからそこを開き、顔に布をかけ、またまた点眼し、あとなんだっけ、いろいろな準備が行われ、「では、サワキ(仮称)様、左目白内障手術を行います」と宣言されます。おお、来たか。
 
それからは、ただただ眩しいランプの間を見続けて、「麻酔をします」「ちょっと重く感じますよ」「いま、水晶体を破壊しています」「吸い出しています」などと説明が続きます。目の奥が、ずーん、と痛いというよりかは重苦しい感じ。でも耐えられないほどじゃない。早く終わってはほしいけど。「レンズ用意して」という声が聞こえるので、あ、もうちょっとで終わるんだな、と思いましたが、その後が結構長い。「ではレンズ入れます」「順調に進んでますよ」などと随時声をかけてもらえるので、不安はあまりありません。何をやってるかは、眩しいだけで、よく見えない。
 
「はい、終わりました。ガーゼで覆いますね。」と、目の上をがっちり保護されて、椅子が戻されました。時間にしたら、手術自体は、正味15分位かなあ。「全て順調でした。何事も問題ありません。」ですって。ありがとうございました、とお礼申し上げる間もないほどに、すぐ車椅子で移動させられます。ドアの前で不安そうにしている次のおじ(い)さんに私も「痛くありませんでしたよ。緊張はしたけど。」と同じことをいったら、ちょっと笑ってくれました。がんばってね。
 
車椅子を押してくれる看護師さんが「ディズニーランドはどうでしたか?」と聞いてくれました。「やっぱり緊張しましたね。」と答えました。そうか、緊張ってこういう時に使う言葉なんだ。実に的確だなあ、なんて思いました。
 
部屋に戻って、しばらく安静にしていてください、と言われました。片目を覆われているので、さすがに読書は疲れそう。夫と母に、無事に手術が終了したことをメールしてから、ベッドに横になって、ラジオを聞きました。こういう時、ラジオって正しい。思ったより疲れたらしく、そのままうとうとしてしまいました。目の奥が、重苦しい。
 

2019/2/16