逃北

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2021年7月24日

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逃北ーつかれたときは北へ逃げます」能町みね子 文藝春秋

「お家賃ですけど」以来の能町みね子である。あ、ジェーン・スーとの対談にも登場したけどね。

能町みね子は、キツイときには北へ逃げたくなるのだそうだ。北海道生まれということもあるし、おばあちゃんが宮城県出身だった(とこの本の中で突然判明する!)せいもある。この北へ逃げたい衝動を彼女は「逃北」と呼ぶ。

この本の中では、新潟、青森、三陸海岸、札幌、夕張、グリーンランドやアイスランド、稚内、宮城なんかに行っている。言われてみれば、私も北は好きだ。利尻礼文と青森は、ものすごく好きで、大好きになっちゃって、また何度でも行ってみたいと思う。南の島のあのダラーッとした雰囲気も大好きだが、北の爽やかさ、人の素朴で控えめな親切さも大好きだ。

能町さんは、観光地をめぐるんじゃなくて、まるでそこに住んでいる人みたいなふりをして、街をのんびり歩いたりするのが好きなんだそうだ。その気持はよく分かる。喫茶店でぼーっとしてるのとか、いいよな。と書いていて気がついたのだが、私達転勤族の生活って、実はそれだ。まるでそこに住んでいる人みたいなふりをして、初めての土地に突然行って、数年間、生活してるふりをして、また流れていく。責任のなさとか所在のなさとか、それでいてたまに仲間に入れてもらうと嬉しかったりすることとか、あんまり変わらないなあ、とつくづく思う。

もうそんな生活もあとちょっとで終わるなあ。と、最後は本とは全く違う感想に浸って、読み終えたのであった。

2020/1/20