須賀敦子の手紙

須賀敦子の手紙

2021年7月24日

47

「須賀敦子の手紙1975-1997友人への55通」

須賀敦子 つるとはな

 

須賀敦子が、アメリカ在住の友人夫婦に当てた手紙が収録されている。活字に起こされているもののほか、現物を写真に撮ったもの、表書きやはがきの絵なども載っている。
 
須賀敦子は、慶応大学国際センターに嘱託として勤務していた時、留学生のジョエル・コーエンとそのガールフレンド大橋須磨子と出会う。その後、彼らは結婚して米国に渡る。長い間大事に保管されていた、須賀敦子から彼らに向けられた手紙が、この本にまとめられている。
 
須賀敦子というと、真面目で内省的で禁欲的な人、というイメージがある。だが、手紙の中の須賀敦子は生き生きと明るく、ときにはっきりと批判的であったり、愚痴めいたりしながら、上品で温かく、前向きである。そして、とても忙しい。
 
彼女にとって価値があるものとは、誰かに認められることではなく、自分が満足すること、自分でその価値を認められることなのであるとつくづく思う。自分らしく正直にまっすぐに生きるとはこういうことなのだ、と思う。
 
手紙は、洒落た包装紙の裏や、かわいい絵葉書などにも書かれていて、彼女のセンスの良さが伺える。筆跡も、読みやすく綺麗にまとまって、でもちゃんと個性のある味わい深い文字だ。最近はもっぱらメールばかりになってしまったけれど、手紙っていいものだな、と改めて思った。

2017/6/19