鴎外の恋

鴎外の恋

2021年7月24日

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「鴎外の恋 舞姫エリスの真実」
六草いちか 講談社

六月八日のこの日記に書いた「鴎外の恋人」の、もう一冊の本がこれである。私は存じ上げなかったが、ドイツ在住のライターである作者が、舞姫の真実に迫った、まるでミステリーを読んでいるかのような本。いやはや、すごいです。たぶん、これが本物のエリーゼなんだろうと、読み終えて思った私。それくらい、説得力にあふれた本です。

今まであらゆる人が様々な資料にあたって、鴎外の恋人を探し続けてきました。その中で、まだ調べ上げていなかったのが、教会関係の資料だったのです。その調査は、実に骨の折れる、大変なものであり、また広い範囲にわたっての調査だったのに、何かに導かれるように、最も適切な順序で、思いがけない出会いの連続によって、エリーゼの真実は明らかになったのでした。

この本は、きっと鴎外や舞姫に興味のない人にも、ミステリとして楽しめるわ。鴎外、悪かったよ、と私はもう一度、森林太郎さんに謝りたい。

それにしても。
たまたま、先日、NHKで「ファミリーヒストリー 俳優浅野忠信 祖父はなぜ、アメリカに帰ったのか」を見たところ。
浅野忠信の、一度も会ったことのないアメリカ人の祖父を追ったこの番組に感動して、泣きそうになったのでした。
ドイツに帰ったエリーセ、アメリカに帰ったウィラード・オバリング。みんな、愛にあふれていたのね・・・。

2011/8/4