女は下着でつくられる

2021年7月24日

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「女は下着でつくられる」鴨居羊子 国書刊行会

「私たちには物語がある」に紹介されていて、読みたくなった本。角田光代さん、ありがとう(・・ってここに書いても、本人には届かないだろうけれど)。鴨居羊子の書いた「わたしは驢馬に乗って下着をうりにゆきたい」と「わたしのものよ」が収録されている、鴨居羊子コレクションの第一巻である。

鴨居羊子は画家鴨居玲のお姉さんで、新聞記者を経て、下着デザイナーとなる一方、文筆活動にも才能を発揮、絵やイラストも描いた才女である。と言っても、私は名前しか知らなかった。「スキャンティ」という下着の名前は彼女の造語だそうだ。派手な下着とかあんまり好みじゃないので、なんとなく敬遠していた人だが、読んだらまあ、面白いのなんのって。細かい活字で二段組になっていたりするので最初は恐れをなしていたが、読み始めたら止まらなかった。勇敢で、よく物を考え、行動的だけれど、細やかな神経を忘れない、かっこいい女性だった。

大酒飲みの新聞記者だった父親が早くに亡くなり、兄は戦死した。お嫁に行くだけが人生の目的だと母に育てられたが、医者の息子との見合いで気に入られなさそうなことだけを喋って断られ、「嫌だったら断ってもいいのよ」と優しげなことを言っていたはずの母にこっぴどく叱られ、一家を背負うために新聞記者となった。新聞の世界が息苦しくなって、派手で明るくて楽しい下着を作りたくなって、母に内緒で記者を辞め、下着を作って売り出し、それがだんだん軌道に乗るまでを描いた「わたしは驢馬に乗って下着をうりにゆきたい」。題名がもうかっこいいじゃないか。上着の下に色とりどりの世界がある、それだけで心が躍る気持ちを商品にした彼女の意気込み、冒険心がわくわくと伝わってくる。「わたしのものよ」はそんな彼女の幼い頃からの想い出が語られている。後に自殺した弟鴨居玲の想い出が苦く切ない。そして、犬や猫に対する強い愛情。この人は野生の人だったのだなあとつくづく思う。

このいきのいいエッセイ集をリクエストしたら、保存庫から出されてきた。鴨居羊子って一世を風靡した人じゃなかったのか。と言っても私も知らなかったからなあ。こんなに元気でグイグイ読ませるエッセイが、もう忘れられているのか。なんだか寂しい。みんな、もっと読んでね。

2016/12/5