「家族」をつくる

「家族」をつくる

2021年7月24日

47

『「家族」をつくる 養育里親という生き方』村木和木 中公新書

 

2005年の本だから、ちょっと古い。状況はまた変わってきているのだろうと思う。いわゆる養子縁組制度とは違って、生みの親が育てない子どもを預かり、社会的な親として育てるのが里親である。児童虐待の急激な増加により里親制度が見直されている、とこの本のまえがきで書かれている。13年前の本だ。虐待死した五歳児が親あてに手紙を残していた事件は、つい最近のことだ。状況は何も変わっていないばかりか、悪化しているのだろうか。
 
そのお手紙事件の後、こんな悲惨な事件を防ぐために里親になりたいと思う、という人がいたので、おすすめできる本を探したら、見つかったのがこの本だった。古いのと、読んでみると成功例ばかりが多く載っていて、実際はこんなにうまくいかないのではないか、という疑問が残ったが、里親とはどんなものか、を知るには役に立つ本だった。
 
私は子供が辛い目に合うことが、本当に許せないのだけれど、だからといって自分が里親になれるかと問われたら、即座に無理だと答える。自分の産んだ子を育てるだけでもヒイヒイ言っているのに、よそ様まで責任を持てるわけがない、と思ってしまう。本当は里親を買って出るような人は増えたほうが良いのだろうけれど、そんなに簡単なことじゃない、と思ってしまう。
 
家族は難しい。最近は、親が老いていくのを見ながら、自分の子ども時代の答え合わせを日々行っているような気分があって、では、どうしたら良かったのか、ああしたら何かが変わったのか、そうしたらどうなったのか、などと考えるばかりだ。でも、正解には決してたどり着けない。家族に正解はないからね。ただ、人にはどうやら家族が必要で、家族に大事にされたり、愛されたりすることは、その人の一生を支えるものらしい。それが足りなかった場合は、どこかで補わないと、だんだん辛くなるものだと思えてならない。
 
愛という目に見えない、形のない、正解のないものが、人間にはどんなに必要か。どうやったらみんなが幸福になれるのか。なんだか、そんな永遠に答えが出ない問題を突きつけられるような気がする本であった。

2018/7/25