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「この世ランドの眺め」村田喜代子 弦書房
2011年に出されたエッセイ集。「八幡炎炎記」や「火環」に登場する人物たちの思い出がたくさん書かれている。ああ、村田さんは、本当にあの物語のような世界に生きていたんだな、と改めて思う。
夫の大病に対する気持ちとか、孫である赤ん坊に対する気持ちとか。突き動かされる感情だけじゃなくて、それをちょっと離れたところで面白がる村田さんもいて、そういう視点をいつも持っているからこそ、あんなすごいものが書けるのだとつくづく思う。自分のことだって、空の上から、少し冷ややかな目で見ているような、そんな感じがする。大人だなあ。
他の人にはないもの。村田喜代子の書くものを読むたびに、それを思う。この人にしかないものがあるから、だから面白い。
2018/10/2