この素晴らしき世界

2021年7月24日

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「この素晴らしき世界!?」中野翠 毎日新聞出版

「晴れた日に永遠が・・・」に続く恒例の中野翠のエッセイ集。春には新しい物を読むのが定番です。

毎年、「去年はこんなことがあったのか」と思い出しながら読んでいる。たった一年前のことなのに、遠い昔のことのように思えるから不思議だ。日々は過ぎ去っていくのね。最近は中野さん、俳句に凝っていらっしゃるようで、毎月扉に一句載せられている。それがなかなか良い出来なので感心してしまう。

少年Aのことが以前から気になって仕方がなかったのに、彼の出した手記はどうしても読む気にならなかった、という中野さんの気持ちがよくわかってしまう。私も全く同じだ。彼が、どんな人間で、どんな心理でなぜあんなことになってしまったのか、については知りたくてならないけれど、彼の出した手記はどうしても読みたくない。そして、許せない。心から共感した。

嬉しかったのは、オードリーがほめてあったことだ。彼らのやっている深夜ラジオ番組「オードリーのANN」がほめてあった。ピンクのベストに頼っているのかと思ったら若林の頭脳が素晴らしい、ただその場限りのおしゃべりではなくドラマ性を持って語ることが出来るコンビである、と書いてある。実は私も「オードリーのANN」は時々聞いていて、普段見せない若林の腹黒いところ、意地悪なところに感心していた。(これは決して悪口ではない。彼はテレビでは人のいい引っ込み思案な部分しか往々にして表に出さないのだ。)また、春日の懐の深さにも驚かされていた。(彼は単なる奇人ではない。)好きな芸人がリスペクトされているのは嬉しいものである。

当たり前のことだが、中野さんも、年々歳をとっていらっしゃる。どうかこのままいつまでも毎年新しいエッセイを読ませていただきたい。そういえば、例年は、中野さんの他に板尾創路の「板尾日記」も新しいのを今ぐらいに読むのが定番だったのだなあ。板尾さんはもう日記をやめてしまった。寂しい・・・・。

2016/4/18