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「超辛口先生の赤ペン俳句教室」夏井いつき 朝日出版社
「プレバト！」という番組を見ている。芸能人が作った俳句を、この本の著者、夏井いつきさんが講評、添削するのだが、実に男前である。どんな大物の作品でも問題があれば歯に衣着せぬ物言いで一刀両断する。その一方で、評価すべきところはきっちり褒め上げる。なぜダメなのか、なぜこうした方がいいのか、わかりやすく、論理的に説明する。少し手を入れただけでつまらない句がいきなり光を放ったりもする。俳句って面白い、と目を開かせてくれる人である。
ゴールデンタイムのバラエティ番組で俳句を添削、なんて通常では想像もつかない企画だが、この人の手にかかれば、上質のエンタテインメントに仕上がる。笑って、考え込んで、はたと膝を打ち、なるほどと納得する。ただの中年女性が、海千山千のタレント連中を相手に、堂々たる存在感を見せている。
私の義母は俳人であった。義母ほどではないが、父方の叔父も俳句の本を出す程度の俳人であった。義母には俳句の世界に何度か誘われたが、ついに手を出さなかった。難しそうだったし、その良さがよくわからないということもあった。義母の句は、時としてはっとするほど強く美しいものがあったが、自分にそれができるとは思わなかった。
今だって出来るとは思わないが、俳句って面白そう、やってみたいとどこかで思う気持ちがある。夏井いつきさんの功績としか言いようがない。「俳句の種まき運動」が使命であるというこの人の志は、受けりゃなんでもいいテレビの中でもしっかりと揺るがない。今後もあの番組は見続けるつもりである。
2016/12/1