クネレルのサマーキャンプ

クネレルのサマーキャンプ

2021年7月24日

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「クネレルのサマーキャンプ」エトガル・ケレット 河出書房新社

イスラエルの作家。テルアビブ在住、両親はホロコースト体験者。これは短編集で、ちょっと長めの表題作もあれば、3ページで終わるごく短い短編もある。不思議な味わいの作品集だ。

表題作は、自殺した人間ばかりが集まる「あの世」が舞台だ。頭を貫通した銃弾の跡が残る人間や、リストカットの痕やら首吊りの痕やらのある人間(?)ばかり集まっている。酒場もあるし、スーパーもある。色恋沙汰だってある。体に爆弾巻き付けて自爆テロを敢行したやつが、もっと輝かしい死後の世界があると言われてたのに、騙されたんだ、なんてぼやいていたりする。シニカルな作品。

かと思うと、SFっぽかったり、日記風だったり、一作一作の色合いが違う。少し星新一風だと思ったら「突然ノックの音が」という本もあるんだって!岸本佐知子が翻訳したがるような奇妙な作風だな、と思ったら、案の定、彼女も翻訳しているらしい。だよなー。

ホロコーストを経験した両親のもとに生まれたイスラエルの作家、と思いながら読むと、また違ったものが見えてきたりするのだが、そういう知識があって読まねばならないような作品ではない。非常に優れた作家だと思う。

2019/3/13