コッコロから

コッコロから

2021年7月24日

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「コッコロから」 佐野洋子 講談社文庫

おはなしでてこいさんから教えていただいた本。ありがとうございました。

読んだことあるわ、確かに。でも忘れてた。たぶん、ずうっと昔に読んだのね。今読むと、きっとその時には感じなかったことを、たくさん、感じたりするんだと思った。

我々おへちゃ組に、勇気を与える本だわ。主人公の亜子ちゃんは「最初っからこわれっ放し」で、「他人が安心する心休まるもの」で「小さくて、ぽっちゃりしていて、まんまるで、すべてのつくりが小さい」こけしにそっくりな造形だ。

そんな亜子ちゃんが、東大生の、ジョン・ローンみたいな美形に迫られる。幼なじみの男子とも、微妙になる。もう、モテモテだ。いいじゃん、いいじゃん。

この東大生、絶対、谷川さんが投影されてるわ。育ちが良くて、自分が愛されないなんて夢にも思ったことがない、女の子にモテるけど、紳士的な賢い男子。幼なじみのケンくんは、沢野ひとしあたりを当てがってあげよう。

亜子ちゃんは、おへちゃだけど、まっすぐで、正直で、自分の心を一生懸命見ていて、そして、ものすごく愛情に包まれて育っている。いいなあ。こんな子、いいなあ、とおばちゃんは思っちゃうよ。

男子に対して、ちょっと病んでる二人の女の子たちに対する目は少し意地悪だけど、これも佐野さんらしい。前に読んだ時は、この女の子たちに対する冷たさが、私は気になったんだったっけ。この子たちには、この子たちの事情があるのよう、って思ったんだ。でも、いるよなあ、こういう子たち、って思う。

角田光代さんの解説が二つもついていて、それが素敵。角田さんは、佐野さんが大好きだったんだ。それがひしひしと伝わってくる。角田さんに負けないくらい、佐野さんが好きだった私も、うんうん、と頷きながら読む。

佐野さんは、素敵だ。
佐野さんの、体はどこかへ消えて行ってしまったけれど、佐野さんの作品と一緒に、佐野さんの心は、いつまでも残っている。
私はずっと、佐野さんが、大好きだよ。

2012/2/16