ヤマトナデシコ日和

ヤマトナデシコ日和

2021年7月24日

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「ヤマトナデシコ日和」清原なつの 小学館

またしても清原なつのである。頭でっかちで、自分が恋していることにも気づかない女子大生を主人公にした漫画「花岡ちゃんの夏休み」に、「私じゃん」と飛びついたあの頃の私。私にとっては「私じゃん」だったが、多くの女の子にとっては「なにこれ、変な子」だったんだろう。だから、メジャーにはなれなかったのね。

で、この漫画である。華道、茶道、陶芸、歌舞伎、鵜飼、書道などの習い事に熱中するエッセイ漫画である。ヤマトナデシコとはいえ、その熱中ぶりは、いわゆるお嬢様芸とはまた違った、非常にコアなものである。「なにこれ、変。」になりかねない世界である。清原なつの、変わっていないなあ。

最近、「日々是好日」という映画を見て、茶道って素敵、と思った。私には長く茶道を続けている友人がいるのだが、彼女の肝の座り方とか、日常の落ち着きっぷりとか、芯の強さを見るにつけても、これは茶道で培われたものではないか、と思えてならない。日本に古くから伝わるお稽古ごとの深さってすごい、とつくづく思う。

漫画「千利休」を描いたくらいだから、清原なつのは茶道に造詣が深い。その深さを持って、陶芸に向かう。どうなるかと言うと、いわゆる古来からの名品と言われるお茶碗を盗作してやろう、と考えるのだ。最初のチャレンジは、加藤唐九郎作の銘「氷柱」である。冴え冴えとした緊張感が素敵・・・なはずのこの茶碗、出来上がりはゆるい仕上がり。タコの干物や小魚アーモンドを入れて、同じく盗作の、荒川豊蔵作の銘「随縁」のニセモノをぐい呑代わりにして冷酒を入れて、一杯やることになる。なかなか楽しそう。

歌舞伎は京都南座だけでなく、金毘羅歌舞伎を見に金丸座まで行っちゃうと言うから羨ましい。書道は欧陽詢の「九成宮醴泉銘」を習い写しているうちにタイプトリップして光明皇后と会話しちゃう。光明皇后は元気の良い字を書く女性だったのよね。

・・・と解説していて、誰が喜ぶんだ、こんな漫画、と思う。確実に私は喜ぶが、売れないよなあ、こんなテーマじゃ。かくて、清原なつのは、いまだに私御用達のマイナーな漫画家のままなのだ、と改めて確認できたのであった。すごく面白いんだけど、共感する人は少ないだろうなあ。

2018/12/25