世界の辺境とハードボイルド室町時代

世界の辺境とハードボイルド室町時代

2021年7月24日

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「世界の辺境とハードボイルド室町時代」

高野秀行✕清水克行 集英社インターナショナル

 

面白かった!と夫からのおすすめ本。高野秀行さんはご贔屓作家だから当然面白かろうが、もう一人の清水克行さんはあんまり存じあげないのでどうかと思ったら、NHKの「タイムスクープハンター」の時代考証を担当されている中世歴史学者なのね。これが面白いのなんのって。対談本なのだけれど、中身は濃い、濃い。日本の中世史を中心とした歴史的知識と世界の辺境の現状と、いろんな知識、知見、教養の裏付けのある対談の深く興味深いことといったら、もう。極上の味わいなのでありました。
 
話は飛ぶ。飛びすぎるくらい飛ぶ。ソマリアと日本の中世が似ているとか、イスラムではひげが重んじられるということと、秀吉が付け髭してたこと、義経は実は卑怯なやつだったとか、足軽は略奪集団だとか、「先」を過去と考えるか未来と考えるかなんて言語的な問題から思想的姿勢の問題に展開したり、そもそもエンタメみたいに歴史や辺境の現状を伝えることの意義とは・・なんてところまで、あっちゃこっちゃに飛びまくるのでついていくのが大変・・・とおもいきや、気持ちよく飛べるから楽しいったらない。
 
そうだ、こういうふうにいろんな場所に時間に人物に空想をどんどん広げられて、それが自分にひゅっと戻ってくる感覚があるから、だからこそ私は歴史が好きだったんだ、歴史がもっと勉強したかったな、なんてすごく思いながら読んだ。
 
それにしてもふたりとも知識と教養の裏打ちが素晴らしい。そして、ちょっとしゃべっただけでその背景までもがザーッと通じ合っちゃうから、話してて楽しそうな事この上ない。ふたりとももっと頑張っていっぱいいろんなこと調査してじゃんじゃん書いてね!ってすご~く思った、良い対談集だった。おすすめ。

2016/5/1