六甲山散歩 その2

六甲山散歩 その2

2021年7月24日

さて、自然保護センターを出て、道に戻ります。信号をわたって、小さな小道に入ります。小学校があるらしい。山の中の小学校。幼稚園も併設されています。冬は寒そうだなあ。しばらく歩きます。右側には、ゴルフ場が。「ここのクラブハウスも、ヴォーリズの設計なんだよ。」と夫が言います。なるほど。

あまりに何もないので、道を間違ったかなあ、と不安に思うころ、ヴォーリズ六甲山荘の入り口がありました。

11時から公開と書いてあります。まだ10時だわ。でも、門が開いている。建物の中に入れなくても、周囲だけなら、見られそうです。試しに、入ってみよう。

たくさんの木々に囲まれて、小さな木造の山荘がありました。中から、人の声が聞こえます。そうっと近づいてみると、「見学の方?」と声をかけられました。
「ええ、でも、11時からですよね?」
「まあ、そうなんだけど、いいですよ、今、掃除してますから、周り見とって下さい。準備ができたらご案内しますね。」
ですって。なんてありがたい。というわけで、山荘周辺のお庭を拝見します。

お庭と言うよりは、小さな森です。たくさんの木々、季節にはさぞかしきれいだろうと思われるあじさいがふんだんに植わっています。

こんな不思議な植物を見つけました。蛇みたい。茎にだんだらもようがあって、、蛇感たっぷりです。(帰宅後、調べたら、「マムシグサ」でした。食虫植物で、ハエが潜り込んで受粉するらしい。非常に興味深い植物です。)熟したものは、真っ赤になって、きれいです。

家の周りをぐるっと回っていたら、もう、中で解説が始まってるみたい。ドアに近づいたら、もう一組、お客さんがいて、「ああ、探したんだけど、見つからんでね。一緒に説明しますから、入って。」と言われました。見学料500円を払って、ありがたく、中におじゃまします。

入ってすぐは、リビング。広々として、気持ちのいい空間です。

通常の日本家屋より、窓をたっぷりとっています。南向きだと暑いので、南側には木々をたくさん植えて、窓は北に面しています。そうすると、花々が、みんなこちらを向いて一斉に咲くのだそうです。

リビングの脇には、小さな暖炉があります。作り付けの小さな木製の椅子があって、家族でそこに座ってくつろぐのにちょうどいい空間です。椅子の下は、収納スペース。薪が入っています。

寝室や、子ども部屋、お客さんの泊まる部屋もあります。ここには、トイレと洗面所もついていて、ホテルみたいです。

ダイニングルームの食器棚は、ステンドグラス。派手な色合いは使わないで、さり気なく美しい作りです。

小さな女中部屋は畳敷き。田舎から出てきた女中さんが、ベッドではかわいそうだからと畳敷きにしてあって、しかも、床が高く作られているのは、天井が高すぎると落ち着かないからなのと、もうひとつ、掘りごたつのため。しかも、その部屋には、壁に作り付けのアイロン台まであって、なんて気が利いているのだろうと感心してしまいました。この部屋の柱には、子どもたちの背比べの跡が残っていて、なんとも微笑ましいのです。

ヴォーリズという人は、本当に心優しい人だったのだな、と思います。お風呂の炊き口が、通常の家屋では風呂の外側にあるのに、煙突を曲げてまで、軒の下に作られています。そうすれば、雨の日でも、濡れずにお風呂が炊けるからなのだそうです。

台所を見学したら、スタッフのおばさまたちが、楽しくおしゃべりしながらお料理の真っ最中でした。「ちょっとおじゃまして、見学させてくださいね」と、解説のおじさまが声をかけると、「はい、どうぞ。ところで、見学が終わったら、珈琲かお茶はいかが?ケーキもありますよ。今、注文してくださったら、ご用意しておきますけど?」ですって。では、紅茶とケーキを頂きましょう。

それから、トイレや洗面所も。水洗で綺麗な場所でした。まだ水洗トイレが一般的ではない時代に、専用の浄化槽を作ったのだそうです。

それから、外に回って、鎧戸を見ます。目立たないように鎧戸を収納するためにいろいろな工夫がなされています。これも、その工夫の一つ。今でもちゃんと動くのだそうです。

木製の窓枠が湿気に負けないように、外側に傾きが付けてあったり、壁と床の間に丸みを付けて、掃除がしやすいようにしてあったり、本当に細やかな心配りのある建物です。住人や、手入れする人の立場に立って作られたことがわかります。生活感がすばらしい。

2012/10/24

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