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「原稿零枚日記」 小川洋子 集英社
小川洋子が妄想癖のある作家だということは「妄想気分」で学習済みだったけれど、これは見事な妄想小説だと感服。途中、何度か、これ、梨木香歩が書いてるのかしら、と錯覚しそうになったのは何故だろう。彼女も、不思議な物語を書くからかしら。
導入は普通のエッセイみたいだと思っていたのに、旅先で苔料理専門店に入って苔を食す辺りから、どんどん不思議な世界に入り込んでいく。現実と妄想が入り組んだような、どこからどっちへ入り込んだのかよくわからないような独特の世界。
読んでいるあいだじゅう、自分がフワフワと違う場所に浮いているような気がした。
小川さん、デビューした頃は、こんな面白くなると思ってなかったけどなあ。才能だなあ。こういう世界があるから、コビトカバに乗って学校に行ったり、人形に入ってチェスを打ったりできるんだなあ。
2011/9/9